廃墟に思う
幼い頃、車でよく通る道に廃病院があった。
結構有名なスポットらしく、不穏な空気をジャンジャンデルノザウルスと言わんばかりに垂れ流していた。
もう、通る度に怖くて怖くて、いつも姿を見るまいと車のなかで丸まっていた。
母もそれを知ってか知らずか、自分が悪いことをすると決まって用もないのにその病院の前を、しかも夜に通ったものだった。
小学生になっても、はたまた中学生になっても、その病院が怖くてたまらなかった。
そしてある日のこと
その病院の解体が決まったことを知った。
廃墟マニアは肩を落とし、もちろん自分は長年の目の上のタンコブが抹消されることを歓喜した。
そして数年がたち、久々に病院の前を通る機会があった。
もう、恐怖におののくことはない!
ばっちり、まるまることなく、お前のいなくなった世界をこの目に焼き付けてやるぜ!!
と言わんばかりに窓の外をのぞくと、なんとそこには
老人ホームが建っていた。
なんともしがたい感情がやってきた。本当にこれで、よかったのか……?と。
なにに対してか、は今でも全く分からないが。
とりあえず今でも臆病な癖は抜けない。
知らずに訪れた地が曰く付きだともう、その晩は安眠できない。
とりあえず、もうこれはネットの弊害と言うことにしとこう。